中小企業の「後継者不在率」初の60%超え 東京商工リサーチ調べ
2024/01/05
中小企業における後継者不在の問題が深刻化している。東京商工リサーチの2023年「後継者不在率」調査によると、2023年の「後継者不在率」は前年から1.19ポイント上昇して61.09%となり、初めて60%を超えたことが明らかになった。
今回の「後継者不在率」調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約400万社)のうち2021年以降の後継者に関する情報が蓄積されているデータから17万1045社を抽出・分析したもの。後継者不在率は、事業実態が確認できた企業を対象に、後継者が決まっていない企業の割合を示している。
調査を開始した2019年の後継者不在率は55.61%。以後、2020年が57.53%、2021年が58.62%、2022年が59.90%と右肩上がりで推移し、2023年は61.09%と初めて60%を超えた。
この状況について東京商工リサーチは、「後継者不在率の増減には様々な要因が絡むため、単純に上昇をネガティブに捉えることはできない。政府や自治体、金融機関などの創業支援で若い経営者が増え、事業承継の時期にない企業の割合が上昇したことも一因とみられる」と分析。実際、2022年「全国新設法人動向」調査によると、2022年の新設法人数は14万2189社で、2021年に次いで過去2番目の高水準だった。
確かに、事業承継を考える時期にない企業が相対的に増加したことも、後継者不在率を押し上げる要因といえるだろう。しかし、問題なのは、後継者を選定する必要に迫られ、事業承継が喫緊の課題となっている60代以上の後継者不在率の高さだ。
代表者の年齢が60代の後継者不在率は46.18%、70代で30.53%、80代以上でも23.82%と高い数字になっており、経営者が事業承継の適齢期に差し掛かっているものの、多くの企業で後継者が決まっていない実態が改めて浮き彫りになった。円滑な事業承継には数年以上の期間が必要とされるだけに、代表者が高齢になればなるほど、早急な対応が「待ったなし」の状況となっている。
事業実態が確認できた企業のうち、後継者が決まっていないのは10万4493社。これらの会社に中長期的な承継希望先を尋ねたところ、「未定・検討中」が5万333社(構成比48.16%)で最も多く、事業承継の方針が明確でない企業や、計画が立たない企業が多いことが分かる。
なお、後継者「有り」の6万6552社に尋ねたところ、その内訳は、息子や娘などの「同族承継」が4万3257社(構成比65.0%)、社外の人材に承継する「外部招聘」が1万2055社(同18.11%)、従業員に承継する「内部昇進」が1万938社(同16.44%)だった。経営者の高齢化や生産年齢人口の減少は今後さらに進んでいくだけに、日本経済の持続的な成長を維持するためにも、同族承継が難しい場合は、事業譲渡やM&Aなどによる事業承継の促進が求められる。
後継者不在の問題を解消できなければ、日本を支える匠の技や高度な技術力を保有する中小企業の存続が危ぶまれる。東京商工リサーチは、「代表者が高齢の企業では、事業承継か廃業かの判断に残された時間は長くない。『大廃業時代』を前に、これまでの対応策は円滑に機能しているのか、再点検も必要だ」と指摘している。